証券会社というと、顧客のニーズにきめ細かなアドバイスをするなど詳しい知識を生かしたやりがいのある仕事だと想像していました。

また、内定の説明で聞いていたのがカウンターでの接客が主な仕事内容ということで、有価証券に興味を持たれて来店されるお客様への詳しい商品説明などが自分の仕事の中心になると考えていました。

それがいざ仕事が始まってみると、すぐに聞いていた内容とは違う業務内容に戸惑いました。

入社研修で行った電話対応の練習とは全く違う、不特定多数への架電を課される電話外交と呼ばれる仕事が長い時間に及びました。

当然電話の向こうの方は、全く証券会社や有価証券などに興味も知識も無いことが多々あり、電話自体を迷惑がられたり怒りを買うことがありました。

このような電話を足掛かりとしての顧客開拓が大きな業務となりましたし、既存の顧客にも新規の商品を進めることが当たり前で、商品販売には『目標額』というノルマが設定させました。

商品説明をするうえで、顧客や新規契約見込みの方々の希望や経済状況とは関係なく、会社の設定した商品を契約にもっていかなければならず、顧客本位の仕事ではないと感じるようになりました。

私は元々、人に物事を説明したり、相手の希望を聞いたりするのは得意なほうだという思いがあったのですが、証券会社での仕事を通しては不本意な働きをしているように思いました。

時にはお客様に良い商品を案内してもらったと喜ばれることもありましたが、多くは相手の希望とは違った商品を勧めていくことは営業をしている私が一番分かっていたので、こんなはずではなかったという思いがいつも付きまとっていました。

ある程度仕事に慣れてくると、そのような思いを何とか薄れさせようと、顧客を分けて、とことん希望商品を紹介して良い結果に結びつくような営業をするグループと、会社の方針を優先して顧客の希望よりも推進する商品を中心に紹介するようなグループを自分なりに作って、ある意味割り切った仕事をしていこうとした時期もありました。

当然そのような仕事の進め方ではお客様の理解や支持を得られないこともあり、上司につないでの苦しい仕事運びになったこともありますし、数字的には良い結果となっても、気持ちとしてはやはり顧客本位ではないという思いがありました。

社内で仕事をする人にもいろんなタイプがあり、とにかく会社の方針に沿っての結果を出せる人おり、顧客への対応も良いのか信頼を得ている人もいました。

真似をしようとしてみたこともありましたが、自分の本心があるのでなかなかうまくはいかず、徐々に仕事をするのが苦しくなりました。

3年目に入る頃には毎日の業務が苦しく感じられてきたことに加え、先輩社員が相次いで退職しました。

そこで引き継いだお客様との対応で、先輩たちと同じようにはいかないということがはっきりとわかり、自分にはやはり本位でない営業方針で仕事をしていくのは難しいと思うようになりました。

更に退職を考えている同僚がいることが分かり、その顧客を引き継いで仕事をしていくのは無理ではないかと感じました。

せめて3年は頑張ってみたいという思いもありましたが、顧客を引き継いで数か月で退職という事態はあまりに無責任ではと感じ、同僚の退職と同時に退職をすることにしました。

入社から3年弱、自分ではなんとか手を考えて頑張ってみたつもりでしたが、根本的に自分の重いと違う仕事方針になじめなかったので、人に役に立っているという実感を得られないままでの業務を終えて、これで良かったのだと感じました、

無理に仕事を続けていたら、商品紹介という努力よりも、結果さえ出ればよいという強引で無責任な仕事のやり方になっていったのではないかと思います。

人には向き不向きがあるので、自分の特性を知って、あまりに合っていない仕事を無理に続けることは無いのだと思います。

できることで努力や工夫をして、より良い環境での仕事をすると良いのではないでしょうか。