世界を股にかけて仕事をしたい、と漠然ながらも大きな夢と期待を膨らませて商社に入社しました。配属されたのは国内営業担当でした。いつかは、海外で働きたい、という夢を持ち続けながら仕事に邁進しておりました。

OJTが終了し、正式にその部署に配属されたのですが、その部署の上司である課長がまさに鬼軍曹のような人物でした。

出勤し、「おはようございます」の挨拶の返しが「バカヤロウ、お前は何やってるんだ!」で始まり、課長の横で延々と説教されることもしばしば。一番辛かったのは、何故自分が怒られているのかさえ分からないということ。

「何がいけなかったのでしょうか」と聞こうものならさらなる追い討ちが待っているため、ひたすら申し訳ございません、と頭を下げるしかありませんでした。

また、その課長は非常に気分に左右される人であったために、同じ仕事をしていても褒められることもあれば叱られることもあり、だんだんとどうすれば良いか自分でも分からなくなりました。

また、商社という立場上、仕入先と客先の間に入り、互いの要求をできる限り請けなくてはならず、完全な板ばさみとなってしまい、自分の仕事の意義も見出せなくなっていきました。

やがて、かつての大きな夢はどこかに忘れ去られ、「退職、転職」の二文字が常に頭を回るようになっていました。就職難の時代だったので、本当はもっと良い会社に入れていたのに、という自分勝手な言い訳までも出てくるようになっていました。

友人や同僚にも気持ちを相談し始め、周りも「そんなに辛いなら」と同調してくれたのですが、そこから私を踏みとどまらせたのは父親の一言でした。

「どんなに辛いか、おれも会社員だったからよく分かる。だが、せめて3年続けてみろ。それで変わらないならまた自由に動いてみな。3年は理不尽な修行だと思って続けてみなさい。心を鍛えるトレーニングだと思って」

それから、どんなに辛くても3年という期限を頭に設定していたので、気が楽になりました。とにかく目の前にある仕事にがむしゃらに没頭していた時期です。

やがて3年経つころには仕事も覚え、環境も変わり、自分のペースで仕事を進めることができるようになりました。鬼軍曹は相変わらず厳しかったですが、理不尽な叱られ方をすることはなくなっていました。

入社1年目はきっと自分の気付かないレベルで色々な失敗をしてたのだと思います。それが何かは分かりませんが、今特に問題無く仕事を進めているということは、きっと何かが向上したのだ、と思うようになりました。

やがて、海外勤務、という夢もかない、上司も部署は異動になりました。忘れていた夢が数年の月日を経てかなっていったのです。

新しい部署に配属されてからは、まるで違う会社に転職したかのように感じました。仕入先や客先も全く違うものになり、使用しているシステムを変わりました。

根本の内容は変わらないので、今までの仕事の経験を生かしながら新しい部署でも仕事に邁進できました。新しい上司や同僚も非常に優しく論理的で、素晴らしい環境になりました。

新しい上司に「よく、今まであの鬼軍曹の下で耐えてきたな、お前なら何でもできるよ」と言われ、初めて鬼軍曹の下で続けて働くことができていたことに感謝しました。

私のこのような体験から、今皆さんが自分が置かれている環境、職場、上司、仕事、において問題や悩みがあるのであれば、それが未来永劫続くのかどうか、あらためて考えてほしいと思います。

人も環境もいずれ変わります。異動のある会社であればなおさらです。だから一時の苦しみで全てを決めてしまわないように心がけると良いと思います。

また、相談する時は仲の良い人物だけではなく、同僚、家族、全く別の環境にいる友人、恋人、妻、と恐れずに堂々と相談してみると良いと思います。様々な意見を得られると思います。

私も父親に相談をしていなければ、恐らく辞めてしまっていたに違い有りません。日没のない朝は無いですし、明けない夜はありません。