私は、京都の大学に通っていて、就職も、そのまま京都で働きたいと思い、その会社に就職を決めました。いわゆる、伝統産業の会社で、社長は10代目、江戸時代から続く老舗でした。
具体的には仏具関係を扱っていて、製造、卸、小売販売から修理まで自社で行っていました。私が担当したのは、一般事務と、小売販売です。
入社を決めたのは、扱っている商品が一代限りではなく何代にもわたって使えるもの、というところに魅力を感じましたが、実際入ってみると、京都ならではのしがらみやしきたりに馴染めず、すぐに辞めたいと思うようになりました。
もちろん、自分に販売という仕事が向いていないなと思ったことも理由のひとつではあります。また、同族会社であったことから、社長の奥様も経営に関わっておられて、その方がヒステリックな方で、ことあるごとに嫌味を言われたり、怒られたりということも原因になりました。
でも一番の問題は、私の直属の上司と合わなかったことでした。
それでも石の上にも三年、という言葉を信じ、初めての就職でもあったことから、なんとか3年は我慢しようと思って、勤めました。
その間、上司からは仕事のミスをするたびに午前中3時間ずっとお説教をくらったり、京都人特有の嫌味を言われたりしていました。
部署の配属人数は私を入れて4人、その上司以外に男性の役職のある方が二人でしたが、実質仕事をしているのは上司と私という感じでした。
また、他の部署とは建物が離れていることもあって、同期に相談ということもなかなかできませんでした。少し話をすることはあっても、どこまで信じてもらえるかもわからなかったし、女性特有の口の軽さも怖くて、話せなかったということはあります。
頑張ろうと思ったのですが、3年を前にして、ごはんが食べられなくなったりして、精神的にもう無理だなと思いました。
たまたま、転職の誘いが来た事や、実家の両親の具合が悪くなったりしたこともあって、退職することを決めました。
辞めると言ってから退職まで、半年ほどあり、その間もつらいことはありましたが、上司からしても私が辞めるということで、これ以上言っても意味がないと思ったのか、最後の半年はまだ和やかに過ごせたように思います。
新入社員として、初めての仕事で、3年で辞めてしまうというのは、私自身はとても悔しかったです。出来れば、一つの仕事を続けたいという思いがあって、そのために入社を決めたからです。
でも実際は、自分の実力不足や、上司の嫌味などに耐えることが出来ませんでした。辞めた最初のうちは、情けないなと思ったりもしました。でも今となっては、それでよかったと思っています。
今、隣で仕事で悩んでいる人がいたら、もしその人が精神的にしんどくなっているとしたら、私は迷わず退職を勧めると思います。
その仕事が好きだとか、こうなりたいとか、少しでも前向きな意欲がある状態で悩んでいるんだとしたら、それは続けるべきだと思います。でも、精神的に参ってしまっているのなら、その状態で仕事は続けるべきではないと思います。
実際、私が辞めた時期、同期を含め何人もが鬱になって私より先に辞めていったからです。
まだ頑張れる余地があって、辞めてしまうのはもったいないけれど、頑張りすぎて自分が折れてしまうのであれば、それは意味がないと思います。
自分の出来る仕事は、その仕事だけじゃないと思うからです。私も、転職した職種は全く違う業種でしたが、自分にはその仕事が天職だと思えるほど、充実していました。
世の中にはたくさんの仕事があるのだから、自分が本当に好きだと思えるような仕事を見つけることが、大事なのではないか、と思います。