歯科技工士という職業をご存知でしょうか?

ブラッシング指導をする歯科衛生士と間違えて認識されている方も多いのですが、歯科技工士とは入れ歯や銀歯や強制装置など歯を作る職業になります。

もともと物を作ったり細かい作業をするのが好きだった私は、好きなことを仕事にできるっていいなという単純な思いから歯科業界に飛び込みました。

後々調べたところによると、歯科技工士は業界自体がブラックで離職率が9割以上といわれているそうです。

実際に私が歯科技工士の資格を取得するために通っていた学校の同級生のほとんどが卒業後3年以内に歯科技工士を辞めています。それほど続けていくには根気のいる仕事なのです。

当時、就職氷河期と言われていましたが、歯科技工士という手に職をもっていたおかげで難なく就職先を見つけることができました。

ですが、資格取得をしているので歯を作る知識は当然あっても経験が足りないために失敗ばかりしていました。

失敗するということは、それだけ作り直すための材料費や時間もかかります。

仕事が終わらず終電で帰る日が何日も続いたり、終電に乗れずに上司に車で最寄り駅まで送ってもらったこともありました。

夜中の2時に寝て朝の6時に起きるといった習慣は過酷でした。そんな生活を続けると当然心も体もボロボロになります。

自宅から会社まで通勤していたので、そんな憔悴しきっている私の姿を毎日みていた両親には何度も『生きるためにお金がいる。そのために働くのであって、仕事のためにあなたが生きているわけじゃないんだよ?もっと自分の体を大事にしてほしい』『今の会社だけがすべてじゃない。他の仕事に転職したらどうだ?』と耳にタコができるほど言われました。

自分の体については自分が一番よくわかっています。しんどいし辛いし今すぐ辞めてしまいたいと何度も思いました。

それでも、続けていたのは『いつか自分の努力が報われる』と信じていたからです。

『この仕事で成功したい』と夢いっぱいの新社会人でしたので、『1年後、2年後にはきっとあの時辞めなくてよかった。続けててよかったと思える日が必ず来る』と希望が持てるからこそ頑張れました。

上司にも『しんどいのは今だけだよ。皆それを乗り越えてきたんだからあなたも頑張って』とよく面倒をみて励ましてくれていました。

ですが、そんな生活が1年も続くと、だんだん現実が見えてきて、『努力しても報われないかもしれない』と仕事をしていて思うようになりました。

適材適所という言葉があるように、人には得手不得手があるのです。

1年前と比べて私は成長してるのだろうか?何も変わっていないんじゃないのか?という疑問から希望が持てなくなりました。

仕事への情熱が冷めてしまったのです。毎日同じような仕事をしていてモチベーションを維持するのは非常に大変です。

労働基準法から著しく外れた過酷な労働下で、すり減っていく心を奮い立たせるものなどないのです。

目をかけてくれていた上司も私に成長の見込みがないと判断したのか、職場で私のことを無視するようになりました。

まるでその場にいないかのような、空気のように扱われるのも非常に辛かったです。

こんな辛い思いをしてまで仕事を続けていく必要があるのだろうか?と思うようになりました。また、別の上司からはセクハラされるようにもなりました。

低い給料で何時間も働いて、無視をされたり、セクハラされたりするうちに『このままじゃ私は壊れてしまう』と思いました。

この業界に見切りをつけるチャンスなのかもしれない、とようやく思えたのです。それからはとんとん拍子で会社を辞めることが決まり、辞表を出してから2週間もたたずに辞めることができました。

当時は辛かったですが、今ではそれはいい経験だったと思えます。

他の仕事についても『歯科技工士に比べれば・・・』と思うとなんでも楽に感じました。

新社会人の皆さんは、『学校』とは違う『会社』という新しいコミュニティの中で壁を感じることは多いと思います。

誰にでも最初からうまくできる人はいません。苦労は買ってでもしろといいますので、若いうちにたくさん失敗をして経験を積んでほしいです。それが未来の自分への肥やしとなっていきます。

今は辛いかもしれませんが、踏ん張りどころです。

でも、頑張りすぎて自分をないがしろにしてはいけません。1日24時間。一般的に寝てる時間の次に多いのが仕事をしている時間です。

ですので、仕事をしているのがとてつもなく苦痛になるようでしたら、それは人生で苦痛と思っている時間の割合が多くなってしまいます。

お金のためと苦痛を割り切れないなら、さっさと仕事を辞めて新しい仕事を探すべきです。

あなたの人生は1度しかないのですから、悔いのないよう生きてほしいです。