私は高校を卒業してすぐに小さな造園業会社に入社しました。私は女なのですがどうしても庭師になりたいという思いが強く、採用が決まった時は泣いて喜んだことを覚えています。

高校時代にそれなりに基礎知識は学んでいたので社会に出てもやっていけるだろうと甘い考えを抱いていたことが間違いだったのかもしれません。

いざ入社すると男性に囲まれながら仕事をするので付いていくだけでいっぱいです。迷惑をかけながらも必死に仕事を覚え、役に立ちたいという気持ちで頑張りました。

入社して3年目を迎え、仕事の流れもだいぶ掴めるようになりました。現場の先輩方とも仲良くなり、仕事が楽しいと思えるようになった頃です。現場に社長が見回りにきたのです。社長が来ると張り詰めた空気が流れ始めます。

私の動きをひたすら観察する社長に対し、恐怖心で手が震えてしまいました。社長は私に向かって「君はこの仕事、向いていないんじゃないか?」ときつい一言を投げかけてきました。

言葉の意味が掴めず、呆気にとらわれていると「動きも遅い、要領が悪い、これじゃただの給料泥棒だよ」と更に厳しい言葉が私を襲います。

社長は女の私が現場に出て働くことを良い様に思っていない様子でした。泣きそうになる感情を堪えて「もっと頑張ります」と強い口調で言いました。

その後、仕事に行く度に社長が見回りにくるようになり、私の立場は狭くなる一方です。会う度に「向いていない」と連呼され、自分は何をしているんだろうか・・・と悩むようになりました。

先輩方は慰めてくれましたが毎日のように社長からクビを宣告されているようで挫けてしまいそうになるばかりです。「自分に合った職業をもう一度探した方が良いのか」という考えが頭を過ぎるようになり、辞職を考え始めた頃です。

設計の仕事に空きが出たという情報が耳に入り、私は興味が湧きました。設計の知識は全くありませんでしたが新しい自分が見つけれるチャンスかもしれないと感じたのです。

社長に直々に頼み込み、設計の仕事をさせてもらえるよう頭を下げ続けました。

社長は「戦力になれるよう死に物狂いで努力するならやってみたら良い」と言ってくれたので、必死で一から勉強し、意地でも社長に認めてもらおうと努力しました。

この時、現場の仕事が向いていないと言われ続け、会社を辞めて自分探しをしようと考えていたので自分にとってラッキーな環境が巡ってきたと思いました。

新しいことを覚えるのは大変でしたが自分の中でこの仕事内容で会社の戦力になり、社長を見返してやるという心構えを常に持っていたので辛くても乗り越えて行けました。

そして設計の仕事に移り、半年が経った頃には本格的に仕事を任され、お客様に喜んでもらえるようになりました。その後、設計の資格としCAD1級の資格を取得し、仕事をどんどん任されるようになりました。

現在は入社して9年目を迎えました。今年は設計コンクールで大賞をもらうことができ、それを聞きつけたお客様が私を指名してくることが多くなり、毎日忙しくしています。

社長も今では私に頼りっぱなしでどこに行くにも私を連れていくようになりました。辞めさせようとしていた時と態度が全く違うので笑えます。

入社3年目にして「向いていない」と言われ続け、諦めることを選択しようと思いました。

しかし、あの時に「なら自分にできることは何か」という疑問を問いかけ答えが出なければ何でも良いからチャレンジしようという考えを抱いたことが、今の自分を作りだしたのかもしれません。

諦める気持ちを持つことは自由ですがその後の輝く自分を心の片隅で想像して行動することできっと前に進めるはずです。

仕事は諦めてもOKですが人生を諦めてはいけません。

もし、自分に向いていないのかもと感じることがあったなら、立ち止まって前向きに進路を見直すことも人生の転機の一つだと思います。