ハウスメーカーの住宅営業は、私のいた会社では実績が上がると給料に手当てとして反映されるシステムでした。

頑張れば頑張るほど給料が上がり、ボーナスの査定もよくなるので若いうちは同世代の他業種の方よりも、かなり高い給料をもらっていました。

ゲーム感覚というほど気楽ではありませんが、それに近い感覚で契約を目指してがむしゃらに仕事をしていました。

一般社員の間は自分のことだけを考えて仕事をしていればよく、会議などの時間以外はすべて自分で管理できるので、忙しい中でもそれなりに息抜きできる時間を確保することもできました。

経験を積み、ある程度の実績を出していると役職がつき、部下を持つことになります。

30代半ばで初めて部下を持つことになりました。部下を持つと今までのように自分のことだけを考えていればよい、という状況ではなくなり、自分のチーム全体の業績を上げることを考えなくてはならなくなります。

そのためには、部下の打ち合わせに同行をしたり、また、役職があるがゆえ会議の数が一気に増え、自分の仕事の時間が極端に少なくなってしまいました。

そういった中でも当然自分自身も実績を上げなくてはならず、かつチーム全体としての実績も上げなくてはならないため仕事の時間だけではなくプライベートの時間までなくなっていきました。

管理能力がない、といわれればそれまでですが、社内でも手がかかるといわれていた社員がチーム内に二人もいたため、彼らの打ち合わせのすべてに同行していると自分自身の業績も落ちる一方で、その結果チームとしても業績が上がらない、といった悪循環に陥ってしまいました。

気づくと会議ではいつも業績を責められ、管理能力を問われ精神的にもマイナス志向になってしまいました。

そのイライラを家にまで持ち帰ってしまったため、夫婦仲も険悪になりこのままではいけないと思うようになりました。

なんとかしなければ、と思いながらも空回りで結果がついてこずなかなか状況を打破できないでいると、転勤の辞令が出ました。いわゆるお荷物的に扱われたのだと思います。

この段階でもやもやしていた仕事を辞めたいという気持ちが本格的になりました。

とはいっても二人目の子供を妻が妊娠中で家のローンも抱えており、さすがに当てもなく辞めるわけにはいきません。

すでに40代になっていましたし、給料自体はなんとかやっていけるぐらいはもらっていましたので、現状維持できるような仕事もそう簡単にはありません。

さらに妻を説得するのも至難の業です。ただ、精神的にもがけっぷちに来ていた私は、とにかく環境を変えないと自分自身が壊れてしまう、という気持ちがあり、生活もでき、妻を説得できるだけの道を真剣に考えました。

それまでもいくつかの資格を取得していましたが、その資格だけで生活ができる、というものはなかったのですが、いわゆる資格商売で生活していけるものはないか、と考え土地家屋調査士という資格にたどり着きました。

土地や建物の登記をする国家資格で、土地家屋調査士の資格者以外することができない仕事です。

もちろん仕事の依頼がなければ収入はゼロなので、安泰とは行きませんが、ハウスメーカーに勤めていた強みで、生活していけるだけの仕事はまわしてもらえる可能性があったので、資格取得のための勉強を始めました。

合格率8パーセントと難易度の高い試験でしたが2回目の受験で無事合格することができました。

今は比較的転職がしやすい時代だとは思いますが、嫌だから辞めた、という人はその後何度も転職している傾向が強いと思います。

何がしたいのかを探すために仕事をいろいろやってみる、というのもよいのかもしれませんが、いざ家族を持ったときに生活がしていける状況がつくれなければ、一生何がしたいか探しで終わってしまいます。

今の仕事にプライドを持て、その仕事でお客様、クライアントに満足を与えられるのであれば多少のことがあっても続けていくことはできると思うのですが、この気持ちがなくなってしまうと続けていくのは難しいと思います。

私も、これがしたい、ということで仕事を辞めたのではなく、嫌だから辞めたい、という気持ちが出発点で後付で調査士という目標を持ちました。

ただ、目標を持つことで気持ちにも張りが出て日々精神的に健康に過ごすことができ、結果としては仕事をやめたことは大正解だったと思います。

自分の人生をどう生きるかを最終的に決断する前に少し冷静になって考えその先に進むことが一番ではないかと考えます。