就職したのは、社会全体で就職難が指摘されている時でした。何十社受けてもなかなか就職が決まらない時代でした。自分も何十社も受けましたが、1次面接、2次面接あたりまでは進むことができても、なかなか最終面接や内定を取ることができずにいました。

そんなときに、公務員試験を受けることを思い立ち、だめもとで受けてみました。

ほとんどまぐれあたりで試験を突破することができ、面接も他の会社の面接で慣れていたので好印象を残すことができ就職できました。運よく就職が決まったと喜んだのもつかの間。実際に配属されたのは、資料整理係でした。

官公庁の中では閑職と言ってよい職場です。周りは定年間際の中高年ばかりで全くやる気がなく仕事のやり方など何を聞いてもののれんに腕押し糠に釘という感じでした。

他の同期は、メインストリームとも言える仕事をする部署に配属されバリバリ活躍しているのに自分が情けなくなり、いっそのこと退職して転職しようと思うようになっていました。

4月に就職して、そんな思いを抱きながら日々を過ごしていましたが、最初の年末あたりで、他の部署の先輩に理不尽に罵倒され、いよいよ辞めたい気持ちが高まっていきました。もう具体的に転職を考えよう、具体的な活動を始めようと思うようになっていました。

しかし、そうしたとき、同じ大学で同じころ就職した友人や先輩の話を聞いて考え方を改めるようになりました。

ノルマに追われ、上司からの罵詈雑言を受けながら必死で仕事をしている先輩や、実際に仕事がきつすぎて辞めて、なかなか次の就職先が決まらない友人の話を聞きました。それらに比べると自分の置かれている境遇はまだまだだいぶ恵まれているほうだと思いました。

そもそも仕事というのは生きるための糧を得るためにするものであり、その目的から考えると、自分は十分な待遇を得ており、この就職難の時代にみずから、せっかく得た職を放棄するのはあまりにも愚昧であると思うようになりました。

このように考え方を改めて、その後は、1,2年くらいは同じような状況が続きましたが、仕事以外で気分転換できる趣味などを見つけて乗り切るように心掛けました。そのうち、仕事ぶりが認められて、もっとやりがいのある部署に異動することができました。

就職したてのときの悩みがうそのように、充実して働ける日々が訪れました。

こうした自分の経験から言えるのは、就職してすぐのころに退職するという大きな決断をしないほうがよいということです。自分も後からいろいろな方に話を聞きましたが、幹部級にまで昇進した人の中にも、若いころはいつも辞めたいと思っていたかたも多かったようです。

それでも多くの人は必ずしも現状に満足できないまでも、日々、目の前の仕事に取り組んで、道が開けてきたのだというように思います。

もちろん人それぞれいろいろな生き方があるので、就職した職場にすぐに見切りをつけて新しい道を歩むという選択肢もあると思います。とりわけ、最近ではブラック企業問題などもありますし、実際に過労死してしまう人もいます。

病気になってしまう人もいます。そのくらいの水準であれば、我慢することが、まさに自分の命を削ることになるので無理をすることはないでしょう。

しかし、なんとなく辞めたいとか、なんとなく自分に向いている仕事でないとか、人間関係が悪くて職場の雰囲気が悪いといった程度では、まだまだ我慢の余地があるのではないでしょうか。

一方で、就職してすぐにはわからないことも多々あるように思います。何年かして初めてわかる、その職場のよさもあることでしょう。ですのであまりに早まった決断はしないほうがよいというのが私からできるアドバイスです。