私が勤めていた会社はマーケティングリサーチ(市場調査)を行う中堅企業で、私はその総合職として新卒採用されました。

勤め始めて最初の数年は、いわゆる「ルーティン」と呼ばれていた、毎日毎日同じ集計に携わる部署に配属されました。

ここでの仕事は日々調査データを集める質問票のようなものをつくり、その後集まったデータをエクセルで加工して、マーケティング案の材料にするといったながれの仕事でした。

このルーティンというのはほとんどの新卒が通る道で、調査会社の初めの登竜門となるものです。難易度はまったく高くなく、どちらかというとコンピューターの前で一日中働くことに慣れるための修行のようなものでした。

私が会社を辞めたいと悩み始めたのは、その数年後、部署編成が変わり、仕事の内容が少しずつ変わり始めたときでした。

部署と担当が変わり、任されるようになったのが、ルーティンとは真逆で応用編の調査ばかりになりました。応用編というのは、お客さんのもつマーケティング課題に合わせて、消費者調査を企画して、見つかった結果や発見をお客さんが納得するようなかたちで案としてまとめる、といったような仕事です。

この部署に異動してから私の仕事の仕方は一変し、毎日お客さんとの打ち合わせ、帰ってからは他の部署とやり取りをしながらの調査企画、というように、毎日毎日コンピューターだけと向かっていた生活からがらりと変わりました。

一見前述の仕事よりも刺激的で、社内でもこういった仕事は一番人気があるので、配属を受けたときはポジティブな気持ちでいっぱいでした。ところがこの部署に配属されてから私の心の中に辞めるという考えが膨らんでいったのです。

まず第一に仕事の難易度が上がったために、まだ慣れない私は必然的に残業時間が増え、土日出勤も当たり前になっていきました。

さらには新しい上司とどうしても気持ちよく働くことができずに、気付けば上司の文句ばかりいっているようになっていました。まわりの同僚は私が毎日疲れた顔で会社に居るのをみて、心配をしていました。

私がこの悩みに対してまず手を打ったのは、メンタルヘルス医に相談することでした。精神的にはまだ病といえるには程遠かったのですが、このままストレスと戦っているうちにどんどん精神的にまいってしまうのでは、というのが怖かったからです。

私の会社には精神的に参って休職してしまう人がおおいためか、メンタルヘルス医が常駐していました。

メンタルヘルス医に相談してよかったのは、会社の上下関係やこまかい仕事内容を知らない、まったく第3者的な立場の人と話ができたことです。

一方最初のうちはとくに一般論しか話すことができないのも事実で、実際の問題解決には道のりがとても遠いような気持ちにもなりました。

そうして悩んでいるうちに幸いにも上司が変更になり、新しい上司とは気が合うようになりました。私も上司を信頼し始め、仕事も順調にすすむかと思えたのですが、実はその後に仕事で大きなミスをしてしまったのです。

ミスに関しては思い出したくない程の大きなミスで、社内でも掲示板に問題と載せられたほど重要なミスでした。ここから私の自信は一気になくなり、その後もなぜか雪だるまのようにミスやトラブルが続くようになりました。

私は自分の経験がなさ過ぎたことを呪い、毎日毎日いやな夢も見るようになりました。メンタルヘルスへ行く気力もなくなり、土日に会社に通っては涙を流しながらひとり作業をしていたように思います。

そして、数か月後、私は上司にも何の前触れもなく退職願いを出しました。上司は驚き、私の考えを変えようと時間をかけて説得してくれましたが、もう退職を考えてから長かったこともあり、また心のダメージからも、もう私の頭には退職という選択肢しかありませんでした。

私は結局退職という道を選ぶことになったのですが、おそらく会社に残りたいという意欲が少しでもあれば他の方法もあったと思います。例えば部署変更の願いをだしたり、メンタルヘルス医ともっと話し合い、休職して様子をみるという方法ももちろんできたと思います。

私は個人的に白か黒かとはっきりしたい性格でもあったので、会社が嫌という気持ちが少しでもあるなら、すっぱりとやめてしまったほうがいい、と決断をしたわけです。

退職後は特に何も準備をしていなかったのですが、今では前職より責任が軽く、毎日定時に帰れるような仕事先を見つけることができたので、安心と満足をして生活をしています。

残業とストレス続きの毎日から比べると、失ったものは大きくないと思っています。