ライターとして、大学院修了後に地元の広告制作会社に入社しました。職安でお世話になった方から斡旋していただくまではまったく考えもしない業界で、もちろん未経験。どのような仕事をするのかはまだまだ未知数で、そのことに少しわくわくしながら入社しました。

が、入った直後は「ライター」とは名ばかりの雑用の数々。会社が運営するイベントの手伝いや、発行する冊子に使う写真の手配、校正依頼、果ては車検の手続きや買い物など、挙げればきりがありません。

小さな会社で教育体制が整っているわけでもなく、誰も何も教えてくれない。何かを書く、ということももちろん、もしかして自分は雑用のために採用されたのではないか、このまま雑用で終わるのではないか、と思う日々でした。

面接時は「ぜひエディターとして」なんて話もされ、「かっこいい、いいな」と期待していただけに、編集の「へ」の字も出ないような状況が歯がゆく感じました。

そんな状況を親や友人にも話せるわけがなく、自分よりも若い人がどんどん仕事をこなしている事実にもめげそうになり、会社にいること自体が苦痛で仕方なかったです。

けれど生来の負けず嫌いのせいか、「辞めたら負けだ」と思い、耐えました。何に負けるのかと言えば、当然自分自身です。自分に「勝った」「負けた」という感覚をおかしいと言う人もいますが、クリエイティブな世界ではそれは重要なものだったようです。

耐えて一つ一つ言われたことをこなしていけば、いつか報われる日がくるかもしれない。そう、自分に言い聞かせ続けました。

さて、そうして耐えて入社後一年近く、ようやく「これを書いてほしい」という話をいただきました。新聞広告として掲載される小さなトピックス欄で、調べれば誰にでも書ける類のもの。けれど書けること自体がうれしくて、その話をいただいたときは続けててよかったと思いました。

これは新聞社の方から聞いた話ですが、入社したばかりの人や未経験の人はそうした小さな記事から書かせてもらえるようになるそうです。私は新卒で入ったためライターとしての経験値はゼロ。

ただ文章を書くことが好きなだけの、まったくの素人で、そんな人間に初めから何かを書かせるなんてするはずもなかったのです。そのことに気付いてからは極力雑誌や新聞、先輩が書いてきたものなどを読むようにして、書き方を学ぶようになりました。

今では本来の「ライター」としての仕事をいくつもいただけるようになっただけでなく、編集の仕事にも携われるようになり、その一つ一つに「楽しい」と感じています。

ただしこれは会社の特性かもしれませんが、「こうすればもっと良くなるんじゃないかな」と思ってもその提案は却下され、「無難」を選びとってしまうところがもどかしく、クリエイティブさに欠ける会社なのかもしれない、と思い始めています。

私は幸いにも、自分にとっての「良い会社」を見付けることができたのだと思います。例えば大手の広告代理店や新聞社、そのほかの大企業に入社していたとしても、それが自分にとっての良い会社となっていたかどうかは分かりません。

「辞めたら負け」と思って同じように耐えたとしても、自分に合う会社でなければ、途中で心が折れてしまっていたかもしれない。

3カ月は会社のアラを探る期間ではなく、自分に合うかどうかを見極める期間。そしてそれは、3カ月という短い時間の中で見極められるものではありません。

少なく見積もって3年。私は今年で入社4年目を迎えますが、「やっぱりこの業界で合っていた」と思うようになりました。この「やっぱり」という感覚は、ポジティブなものでもネガティブなものでも大事なものだと思います。

「やっぱり合っていた」ならそのまま続ければいい、「やっぱり合わなかった」なら、今度は自分に合う会社を探しに行けばいい。新卒なら、自分と会社との相性をじっくり見極めてから辞めたって遅くありません。――新卒入社の強みは、そこにあるのではないでしょうか。