某不動産会社の投資用マンションの販売営業として新卒採用されました。新しいスーツに身を包み、張り切ってマナー研修も終え、いよいよ配属です。営業は5課に分かれており、同期が3人ずつくらい同じ課に配置されるようになっていました。

まずは販売するマンションについて概要を把握します。構造、立地条件、利回り等です。始めは実際にその物件を見学に行きました。それから、営業先を決め、あとはひたすら電話です。電話でアポイントを取ることが第一の仕事なのです。アポイントが取れたら、上司と一緒にプレゼンに行くというわけです。

営業先は主に大手の広告代理店、ゼネコン、IT関係の会社などでした。社内に名簿があり、その名簿を見ながら電話をするのです。名簿屋なるものがあり、そこで入手するらしいのです。

平日の日中に、仕事の忙しい中、営業電話を歓迎してくれる人なんていません。話を聞いてくれないどころか、「ガチャ切り」されたり、怒られたりです。しかし、営業ですから数字をあげなければなりません。

社内には目標の数字と個々の実績が大きく壁に貼り出されていました。結果の出せない先輩営業マンたちは上司に罵声を浴びせかけられていました。一度は灰皿が飛んでいたこともありました。

もちろん私たちも新人だからといって怒られないわけではありません。アポイントが取れるまでひたすら電話です。一日中電話の日々に嫌気がさします。そして社内のピリピリとした空気。休憩中に同期で愚痴を言い合い、慰め合って何とか日々を乗り越えてきましたが、そのうち1人、2人とやめていく人が出てきました。

男性が多い中、同じ女性で仲良くしていた同期が、ある日辞めると言いました。上司の怒り方に納得できず、雰囲気にも耐えられなかったようです。毎年何十人と新入社員が入るのに、残るのはほんの数人だと聞きました。

電話ばかりの毎日に私もいよいよ耐えられなくなりました。ちょうどその時に知人から仕事の紹介をされました。自分の興味のある分野だったので、その話に飛びつきました。このまま毎日同じようなことを繰り返しているよりも、ここは思い切って転職をしようと思ったのです。

その時点でアポイントが取れたのは1件だけでした。いざ、上司と大きな会社に出向きましたが、購入の意思は極めて薄く、ちょっと話を聞いてやろうかという感じでした。

上司に事情を話し、退職の話は受け入れられました。辞めていく人が多いせいか、はなから戦力外とみなされていたのか、それほど引き留められることもなく無事退職できました。その後転職し、心機一転、充実した日々を送ることができました。

同じように辞めていった同期たちとその後も連絡は取っていましたが、みんな転職してよかったと言っていました。退職を後悔している人はいませんでした。

辛いから、きついから、という理由で仕事を辞めていては、どんな仕事も続かないとは思います。現実逃避だとか根性なしだと言われるかもしれません。しかし、納得のできない仕事を続けること、ストレスだらけの環境に居続けることが自分にとってプラスになるでしょうか。

電話をかけてもかけても断られる日々。今思えば、もっと違った切り口があったのではないか、とか、スキルアップの努力や工夫が足りなかったのではないかとも考えられます。

それでもやはり、転職という選択は自分にとって正しかったと言えます。自分にとって何がいい方法なのか。続けることがよいのか、思い切って辞めることを選ぶのか。

その見極めが大事だと思います。逃避としての転職ではなく、自分は何をしたいのか。そのために何を選ぶのか。自分が本当にやりたいことであれば、辛くてもそれは続けられるはずです。